愚痴

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愚痴

『だから職業じゃないのよ。正義の味方は!』  彼女はシャワーを浴びながら少しふて腐れたモノの言い方だ。 「え、職業じゃなかったら何なんですか?」 『そうねえェ。ブラック・慈善事業(ボランティア)なのよ!』 「ううゥ、ブラック・ボランティア?」 『そうよ。だって報酬が出ないんだから。ジャスティス・ブラックやブルーはセレブだから、それでも構わないんだろうけどねェ。私みたいなプアなキャバ嬢には無理なのよ』 「そ、そうなんですか」  なんとなく納得できない。 『だから正義の味方は金持ちの道楽みたいなモノなのねえェ』  とめどなく愚痴が続いた。 「なるほど。では、こうしてみたら?」 『はァ、なによ?』  彼女がシャワーを絞って聞き返した。 「クラウドファンディングで正義の味方に寄附を(つの)って、それで活躍に応じた報酬を出したり、正義の味方の保険を作ってユーザーに掛けて貰えば」   『フフッ、そんな事は、みんな考えてるわ。でも結局、悪いヤツらに乗っ取られて、本当にお金の必要な正義の味方には、僅かな報酬だけで運営するようになるのよ』 「ぬウゥ」  なんともやり切れない思いだ。  正義の味方が利用され狡猾な悪党(ヤツ)らに上前をはねられるのか。 「それでも正義の味方は」  なおもボクが反論しようとした。 「うッるさい。わかったわよ!」  彼女は逆ギレしてバスルームから飛び出してきた。
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