いきなり正義の味方

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いきなり正義の味方

 真夜中、ボクは小腹が空いたので近所のコンビニへ立ち寄った。  昨夜から降り続く雨もようやくやんだみたいだ。  昨日の夜はヒドい雷雨だった。  夏休み真っ只中なので少し動いただけで暑くて汗が滲んだ。  今年の夏は異常気象だ。  いやこのところ毎年の事かもしれない。  相変わらず、深夜になっても暑苦しい。  今夜も間違いなく熱帯夜だろう。  コンビニのドアが開くと軽快な音楽が流れた。 「ふぅ〜」ボクはひと息ついた。  さすがにコンビニの店内は涼しくひんやりして心地よい。  赤い買い物カゴを手に取り、ひと通り店内を回ってみた。  取り敢えず、牛乳とコーラを買い物カゴへ入れた。  あとはカップラーメンか、それとも菓子パンでも買っていこうか。    その時、いきなり見ず知らずの美少女が背後から歓喜の声を上げボクの背中へ飛び乗ってきた。 「キャッキャキャァーーッ!」 「わァァァ、い、いきなりなんですか?」  思わずボクは驚いて腰を抜かしそうになった。  突然、女性がボクの背中へおんぶをして来るなんて初めての体験だ。  まるで小学生みたいな美少女だ。  アルコール臭くはないが、酔っぱらいなのかもしれない。  香水なのだろうか。痺れるような甘い匂いがボクの鼻孔を刺激した。 「……」  店員や他の客たちもあ然として見ていた。 「ねえェダーリン。オレンジジュース買って。オレンジ。あとポテトチップスコンソメ味。それとポッキーねえェ。あとハーゲンダッツのアイスクリーム!」  美少女はボクの背中に乗って駄々っ子のように命令してきた。  夏とはいえ、大胆なへそ出しコーデだ。ミニスカートから伸びるむき出しの脚は白くて(なまめ)かしい。 「ちょっと待ってください。ダーリンって言われてもォ?」  そんなにお菓子ばかり買えるはずはない。予算を軽くオーバーしてしまう。 「待たないわ。待ちたくないの。だって私、正義の味方じゃん」 「なッいやいや、どんな理屈ですかァ」  正義の味方だから待ちたくないって。
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