ピーチ姫

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ピーチ姫

 ボクは大慌てで、彼女の手を引きバスルームへ案内した。 「さァどうぞ、ここが脱衣所ですから」 「フフゥン、面倒くさいからふたりでお風呂に入っちゃう?」  彼女はボクを誘いウインクをした。 「えェ?」一瞬、ボクは時が制止したように動きが止まった。  ふたりの間に微妙な空気が流れた。 「ああァ、ジョークジョーク。ゴメン、マジだと思っちゃった?」  彼女は軽くパンチをボクの肩に放った。   「アッハハ、そりゃァ冗談ですよねえェ」  ボクが、彼女の言葉を鵜呑みにして真に受けたことが悪いのだろう。  ボクは足早にリビングへ戻り、コンビニで買ってきたジュースや牛乳などを冷蔵庫へ詰め込んだ。  遠くからパトカーのサイレンの音が響いてきた。  なにやら近くで事件でも遭ったのだろうか。  アイスクリームは冷凍庫へ入れ、あとはほとんどお菓子ばかりだ。  テレビをつけると緊急ニュースが流れていた。  都内で悪の秘密結社の怪人が数体暴れているらしい。  どうやら見た感じではここの近所でのことのようだ。  深夜の街並みに見覚えがあった。 「ううゥン、やっぱ、ピーチ姫に(しら)せた方が良いのかな」  ボクは躊躇いながらもバスルームへ行った。  シャワーの音が響いてきた。 「あのですねえェ。ピーチ姫。シャワー中、ご迷惑でしょうが良いですか?」  ボクはバスルームの外から彼女を伺った。
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