ホームシック①

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 もう結末が分かった方もいらっしゃるのではないでしょうか。  はい、そうです。  保安検査場を通過した後、味噌は荷物から消えました。  検査する方曰く、味噌は液体らしい。  水と同様に100ml以下しか手元に残しておけないらしい……。 「味噌汁ではありませんよ!?固体の味噌ですよ!?」  という反論はまったく聞き入れてもらえず、そのまま没収。  取り上げられた瞬間、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、味噌汁のない生活を想像して家が恋しくなりました。  検査の巻き添えを食らい、一緒に外に出されてしまった他の食材をカバンに詰め込みながら、どう考えても味噌は固体やん、と心の中で愚痴をこぼしていると、横のレーンで、悲しそうな顔をしてカバンから数袋の味噌を出している女性の姿が……。  運命を感じた瞬間でした。  どうやら向こうも私と保安検査員のやりとりを見ていた様で、二人で一緒に、 「味噌は固体ですよねぇ?」 「ですよね!!」  みたい会話を繰り広げ、荷物をまとめ終えてから一緒に空港の売店を回って必死に味噌を探しました。  やっぱり、味噌を買う人は一定数いるんですよね。  ほぼどの売店にもありまして、すぐに見つかったのでそのままカゴに。  そして、味噌のすぐそばに宇治抹茶も……。  抹茶の存在を完全に忘れてしまっていた私はそれも一緒にレジに出しました。  何とか出発初日でホームシックを感じる事態は回避できましたとさ。
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