『電信柱の母娘』ぞっとする短編実話怪談

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『電信柱の母娘』ぞっとする短編実話怪談

全て実話です。 昭和四十年代、ヘドロで川と海が汚染され社会問題になった頃、私が幼稚園に通っていた時の話です。 毎朝父が徒歩で幼稚園まで私を送り、帰りは母が迎えに来るのが日課でした。 そんなある日の朝、父はいつも通う道ではなくなぜか別な道を選び歩きます。 「どうして違う道を歩くの?」 私が訊ねると父は険しい顔をし何も答えません。 川沿いの細い道をしばらく歩くと突然立ち止まりました。 そして父は周りに誰もいないのを確認すると、電信柱を指さし私に訊きました。 「あの電信柱に、知らないおばさんと小さい女の子が見える?」 私は父の言葉の意味が分かりません。 首を傾げ黙っている私を抱き上げると、再び電信柱を指さし言いました。 「ほらよく見て!電信柱の上から笑いながら手を振っている、おばさんと女の子が見えるでしょ!」 私はちらっと電信柱の上を見ました。 怒ったような口調で言う父に怖さを感じ肩に顔をうずめて、「見えない!」と叫びました。 父は、自分にははっきりと見える電信柱の上に立っている母と娘が、子供の私にも見えるかどうかを確認したかったようです。 「もっとよく見て!白い着物を着て笑顔で手を振っているでしょ」 何度も訊ねましたが私は首を横に振りました。 がっかりした表情の父は、抱いていた私を下ろすと幼稚園に向かい歩き始めました。 幼稚園の帰り道、私は母に今朝のことを告げ口しました。 その夜、仕事から帰宅した父に母は狂人扱いし激怒しました。 それ以降父と私はあの電信柱の道を二度と通ることは無くなりました。 私は父に嘘をつきました。 私はあの日、電信柱の上に立っている母娘がはっきりと見えていました。 父は、母娘が笑顔でこちらに手を振っている、と言いましたが私が見たのは・・・ 汚れた着物を着て、恐ろしい形相で私を睨みつけ、こっちにおいでと手招きをしている母娘の姿でした。 あれから何十年も時が流れ、すっかり年老いた父は今も・・・ あの電信柱の上から笑顔で手を振る母娘が見えるそうです。 YouTube「あなたを誘う恐怖世界Ⅱ」より    ©2024redrockentertainment
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