天乃翼の独り言

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マコちゃんの部屋を訪れたのは今日で二度目。 六畳の畳敷きで窓のそばにシングルのベッドが一台、頭側には壁、足側にはクローゼットが設置されている。 羽毛布団を掛けて仰向けでスヤスヤと眠っているマコちゃん。 唇が薄く開いているのに目が釘付けになる。 そこにそっと触れてもいいだろうか。 出来れば、唇で。 …ま、理性があるうちはしないけど。 「マコちゃん、よく眠ってる」 オレンジ色の柔らかな灯りがマコちゃんの顔に影を作っていた。 「あ〜何これ、目の下に隈が出来てんじゃん」 無意識に指が伸び、人差し指の腹でマコちゃんの頬に触れる。 湿度が低いせいなのか肌は少しカサついていた。 「もう…ちゃんと食べてるのか心配…」 つい何度も指を往復させマコちゃんの体温を確かめる。 「…ん…」 調子に乗って触れたせいかマコちゃんの口がへの字になり眉間に軽く皺が寄った。 「…ぁ… …」 「マコちゃん?」 瞼が少し開き宙を見つめるがその瞳は焦点を結ばず再び閉じた。 「寝ぼけてるのかな」 まだ夜は明けきっておらず起こすのは躊躇ってしまう。 だがただ待つなのも地味にしんどい。 「寒いな。リモコンは…あった」 頭側の壁、ベッドに寝ていても手が届きそうな位置にエアコンのリモコンがあり俺は勝手にスイッチを押した。 ピッという音がしてウィィンと動き出す。 さて、どうするか。 『朝が来るまでマコちゃんの観察をするか?それとも…』 キョロキョロと室内を見回すと蓋の開いたダンボール箱が目に入った。 中には丸めた紙が入っている。 そしてテーブルの上にはノートパソコンとボールペン、それから見慣れない異質なモノ。 知識として知っているが現物を見るのは初めてだ。 「これ…まさか…」 ドキドキと胸が煩い。 俺の見間違いでなければこれは…。 急に体が暑くなり着ていたダウンを脱いだ。 「…あ…ぅ…ん…」 「マコちゃん!」 目が覚めた…訳ではなく、モゾモゾと布団の中で動いて…その拍子に羽毛布団がベッドから床に滑り落ちた。 マコちゃんの脚が露になる。 「…ぁ…」 マコちゃんはパジャマなんか着ていなくて、薄いシャツ一枚を身につけてベッドに入ったみたいだった。
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