山の学校

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春山小学校は山の上にある。 校長先生は熊谷先生。 毎日校庭で絵を描いている。 青い空に白い雲、小学校からは山の上だから遠くまで見える。 給食の先生は飯田先生だ。 いつも白いエプロンをつけて給食室で美味しいお昼を作ってくれる。 「おはようございます。」 「校長先生、おはよー♪」 「はい、おはようございます。元気な声だね。」 毎朝、校長先生は学校の門のところでニコニコしながら「おはよう」と登校する生徒に言ってくれる。 学校が始まりますよのチャイムが鳴ると、校長室に戻ってお茶をのんでから今度はスケッチブックや絵の具をもって外に出る。 「今日は何を描きましょうかね。」 外に出たところで、学校から一番遠いお家の子どもが校門から入ってくることもある。 「おはようございます。えらいね、今日もちゃんと学校にきて。」 「あ、校長先生ー。おはよう。またねーー。」 走って教室に向かう姿をニコニコしながら校長先生は見送る。 担任の先生には「遅刻」ってつけないように言ってある。向こうの山の中にあるお家だから、自動車でも10分はかかる。子供の足なら1時間はかかるだろう。 「校長先生、いってきまーーすっっ。」 突然、後ろから声をかけられて、スケッチブックをバサッと落としてしまった校長先生。 「あ、今日は外学習の日でしたか。」 スケッチブックを拾いながら、校長先生は付き添いの先生に声をかけた。 外学習は近くの田んぼや畑の作業の見学やお手伝いだったり、草むしりを兼ねた植物採集や昆虫採集をしたり、学校の外でいろんな経験をする授業だ。 「今日はどこですか?」 「河原のゴミ拾いです。」 「それはいいですね。そうだ、私もついていっていいですか。」 「それは助かります。ぜひ。」 校長先生は部屋に戻って帽子や軍手をバッグにつめて、もちろんスケッチブックも一緒に入れて。 坂道を下って生徒と担任の先生に追いつくと、汗だくだった。 首にかけたタオルで顔を拭きながら、帰りはゴミをのせるリヤカーに追いついた。行きは水筒やお弁当、ライフジャケットがのせてある。 山の上の学校から坂を下ると丸い石がゴロゴロしている河原に到着だ。 堤防を降りたところから上流の橋が架かっているところまでがゴミ拾いの範囲。子供たちにライフジャケットを着せて、水筒の水を飲んだら河原に落ちてる缶や瓶、ペットボトルを拾っていく。担任の先生たちは河原に流れてくる流木をリヤカーに積んでいく。 流木は学校に持って行って、冬のストーブの薪にもなるし、秋のお米の時期には校庭でやるカレー大会のときの燃料にもなる。 もってきたゴミ袋が一杯になったら、学校に帰ります。 一人ずつライフジャケットをリヤカーのところに持っていって名前を付き添いの先生に言って全員揃ったのを確認したら出発です。上り坂では、リヤカーをみんなで後ろから押していきます。 「がんばれー、もうちょっとだー。」 「おーー、がんばるぞー」 元気のいい生徒の声が細い山道に響きます。 道の両側に生えた木の上からはリスたちが見てます。カラスも首をかしげて一声、カアとないて飛んで行きました。 学校に帰ると給食室からいい匂いがしてます。 「さあ、みんな手を洗って顔も洗ってうがいもして教室に行きましょうね。」 「先生ー、くつしたが濡れちゃった。」 「靴もーー。」 「はいはい、靴は日なたに出してね。帰りまでには乾くでしょう。」 わいわいとにぎやかに教室に帰っていく子供たちを見送る校長先生。 「さて、今日の給食は何だったかな。」 校長先生も手を洗って顔を洗ってうがいをしてから、校長室に戻ります。スケッチブックには河原の絵がかいてありました。川と橋と山がなかなかうまくかけたなと、校長先生は思いました。 「あとで色を塗ってみるかな。」
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