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◇
地に伏す、一人と一匹の亡骸。
衝突音にびっくりして逃げ去った子供たちが、恐る恐るといったていで戻ってくる。
そして彼らは見た。
血に塗れた枯れ草の地面から、ゆらり、と「人」が起き上がるのを。
球蹴り遊びのボールが、子供の手から落ちる。震える指が、立ち上がった青年に向けられた。
青年は、一対の――蝙蝠の羽を、背に持っていた。
大きな羽が、ひとりでに動き、青年の身体を包む。愛するひとの抱擁を受けるように、青年は幸福そうな顔をしていた。
羽を広げ、飛び立つ。森の木々が、喝采に似たリズムで揺れた。
青年の姿がその地平から見えなくなるのに、そう、時間はかからなかった。
〈了〉
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