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「ピエロは泣いちゃダメなんだよ。何故か知ってる? 商売道具が落ちて、醜いのがバレちゃうからさ」枯れ葉の当たったところを、ぺちぺち、と叩く。「僕はまだギリギリ、面白おかしい珍道中のまっさいちゅう。ね、――キミはどう?」
「……おれは、お前さんの心が分からんよ。人間」
男が、伏せていた目をひらく。長い睫毛の影がまた少しして、色を喪った頰に落ちる。「――そっか」
「おれは所詮、下らん禽獣だからだ」
遥か下で、砂煙の舞う音が聞こえる。
「お前さんに始まったことじゃない。同類の心もだ。さっぱり分からん。おれには。……だから、どちらの味方も、しようが無いのだ。そうしたら、そんな仇名を頂戴する羽目に、いつの間にやらなってしまった。……羽だけに」
「そこは、ダジャレを言う所じゃないねえ」
男は笑った。そして、目を細める。「――本当に優しいね、キミは」
「やっと笑ってくれた、と言おうとしたのだが、……やはり、お寒いか」
「いや?」横髪に触れる。耳が少し赤かった。「とても温かいよ。キミの羽くらい」
「そうか」
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