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「ねえ、……キミはアホだねぇ」
羽が無言のうちに男から取り去られた。
「ああ、ひどい」畳まれた羽にヨヨヨと縋る。「早く戻してくれたまえよ。僕が流す涙で羽が湿気っちゃうよ。これだからフツーの奴らは」
「分からん。何がしたいのか」
「僕には分かるさ。だから、こうして言ってるんだ」男は頰を膨らませた。し慣れた動作ではないのか、風船はすぐにしぼんでしまう。
「僕にはね、分かるんだ。悪い奴らには、同調する必要なんてないんだよ。白いシャツに苺ジャムが落ちたら、どうなるか分かるかい? それはね、人生の汚点という名の染みになっちゃうんだ」ブラックジョーク、と二回繰り返し、けらけらと笑う。どこか悪意のある笑い方だ、と、彼は思った。
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