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「――落ちてるね」
「……すまない。半ば分かっていたことなのに」
「僕もだよ」男の顔は見えない。でも何となく、笑っているように、彼には思われた。
彼の顔にも同種の表情が、浮かんでいたからだった。
「キミは怖くない、えっと――コウモリさん?」
「リタ」彼は低く言った。「思い出せて良かった。リタと呼べ」
長いこと仇名で呼ばれていたから。小さく呟き、リタは言った。「お前さんこそ」
「僕はマキナ。相応しい名だろう」
嘲るように笑い、「こうなるのはね、実を言うと、分かってた」と、言った。
「ただ、理由というか、あー……何ていうかな。きっかけとか、何かそういうのが、欲しかっただけなの」背中を掴む指の力が、強まる。
「そんなことのために、キミを利用した。ねえ、……ごめんね」
「仕方ない」リタは軽く笑った。加速度は一定だった。ただ終わりまでの時間と重圧が、刻一刻と大きくなるだけだった。「――なあ」リタが思いついたように、マキナを呼んだ。
「何?」
「足りない者同士補い合えたなら、どんなに幸せだったろうな」
「――ふふ」
マキナは困ったように笑う。
「確かに。――似た者同士だけど、似てないんだよね、僕達って」
「互いの心だけ、最後に分かり合えたみたいだから、まあ良かったよ」リタの声が、何か言いかけて途切れる。
少し長い、エンドロールだった。
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