死体遺棄妻VS絶対死体遺棄させない神

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 某県某村、山中――     真夜中の森閑とした山道を、女性がひとり、息をひそめて歩いていく。  服装は登山者のそれで、手にしたライトが荒い足下を照らしている。女性にしては大ぶりなバックパックを背負い、焦らず一歩一歩踏みしめていく。  やがて辿りついた先は、誰にも見咎められることのない、山の中腹。彼女はバックパックを下ろし、袖で額の汗を拭うと、すぐさま次の行動に移る。  バックパックを置いた木の幹には、ショベルが立てかけてあった。それは、他の誰でもない彼女の所有物だ。  地面をライトで軽く照らし、ひとつ頷く。  縦・一メートル、横・五〇センチの四角い穴――土木作業など無縁だった彼女が、必死になってこしらえた穴だ。  一週間前にこの穴を掘ったときと、さして変わりない状態で確かにそこにある。多少落ち葉が入りこんでいるが、問題ないだろう。  彼女は腰を上げ、バックパックの前でしゃがみ、サイドポケットから紐を取り出す。ライトに括り付けて木の枝から下げ、穴周りが照らされる角度に調整した。再びしゃがみ込んで、ひとつ長い息を吐くと、バックパックのジッパーを、山の静寂を破らないよう、そうっと開けた。  中に入っていたのは、黒い色をした大型のプラスチックコンテナだった。  彼女はそれを両手でしっかり持ち、落とさないよう慎重に運ぶ。前回ほどキツくはないが、今回だって楽なわけじゃない。連日の作業で、疲労もだいぶ蓄積している。それでも、腕にずりしとくるその重みは、彼女の口元に昏い笑みを結ばせた。  これで最後。これで、ぜんぶ終わり。  大きな音を立てないよう気をつけながら、彼女はコンテナを地に下ろした。それから、コンテナをゆっくりと穴に向かって押し出して―― 「あーあー、あかんてぇ、それ」  間延びした声がした。
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