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05. 特魔隊配属日
ついに特魔隊配属日が来た。俺は砦の演習場に来ている。
演習場には緑色基調の軍服を着た屈強な黒髪の男と金髪ツインテールの少女がいた。
「初めまして、八雲です。マルコさんとエルサさんですか?」
俺は二人に問いかけると、大男が答えた。
「そうだよ、僕がマルコだ。僕たちの上司に当たるグスタフ隊長は任務があって、しばらくスタットベルグから離れているから、当面は僕たちの指示に従って動いてもらうことになるよ。」
マルコは大柄の男だった。身長は190センチ以上もあり、肩幅も俺の倍くらいありそう。
だが、話し方は穏やかで、くまさん系雰囲気をまとっている。
「あたしがエルサ、あんたの先輩で、霊神『大地の神』の紋章保持者よ!」
エルサは転移初日に俺を拘束した金髪ツインテだった。
整えられたツインテールが、彼女の動きに合わせて軽やかに揺れる。大きな瞳は碧空のように青く、瞬きするたびに長いまつげが上下する。白磁のように滑らかな肌に、頬はほんのり桃色を帯びている。小さな鼻と柔らかそうな唇が、彼女の可愛らしさを一層引き立てている。
うん、目の保養になる。仲良くしよう。
男くさい軍隊で彼女のような清涼剤は貴重な存在だ。大切にしよう。
「初めまして、どうぞよろしくお願いします。」
エルサは先輩だと強調するし、軍隊って縦社会的な感じがあるから、ちゃんと後輩ムーブをしよう。俺はできるだけ、丁寧に受け答えた。
「ふん!言葉遣いはちゃんとしているじゃない。これからビシバシ鍛えるから覚悟していなさい!」
「基本的に八雲くんの指導は、エルサにやってもらおうと思っている。僕は地神の紋章だから、デバイスの使い方を教えられないしね。」
デバイスとは、霊神以上の神格の紋章保持者が超常現象を引き起こすために必要な武器だとソフィアから聞いていた。
「なるほど、了解です。では、エルサ『先輩』、ぜひご指導をよろしくお願いします。」
「えぇ!いい返事じゃない!」
エルサは『先輩』と呼ばれることにとても嬉しそうにしている。ソフィアといい、この世界の人間は敬称で呼ばれることが好きなのだろうか。
「じゃあ、僕は事務仕事があるからこれで」
マルコが演習場を去った。
「まずは、八雲の紋章の力を引き出すことから始めるわよ!ちなみに、八雲がまともに紋章の力を使えるようになってから、作戦や連携について教えるわ!戦力になってくれないと話にならないからね!」
俺もずっと紋章の力を使いたいと思っていたので、歓迎である。
ああ、ようやく俺のチート能力が使える!
「よろしくお願いします。でも、具体的にどうするんですか?」
「まずは紋章を起動から始めるわ。あたしの真似して。」
エルサは自身のシャツの裾を少したくし上げた。細いウエストとおへそが露出する。
え!え!?何しているの!?眼福!眼福!ありがとうございます!
エルサの突然の奇行に驚いたが、すぐにエルサの意図を理解した。
エルサのお腹あたりに、槌、いわゆるハンマーの模様が浮かんでいた。
エルサは『槌紋』に手を当て、「リブート」と唱えた。
すると、エルサの輪郭が青白く浮き出て、瞳もうっすらと光っているように見えた。
俺はエルサを真似して、自分の左手にある『雲紋』に手を当て、「リブート」と唱えた。
奇妙な感覚だった。
自分の意識が、紋章を通じてどこか遠いようで近いような時空超えた何かに接続された感覚。
そして、強大な力の気配を感じる。
「感じた?それがあなたのデバイスよ。あなたはそのデバイスの名前を知っているはず。デバイス名を呼んであげて」
「わかりました。」
俺は自分の左手の『雲紋』に人差し指と中指を添えた。
「天羽々斬(あめのはばきり)!」
すると、虚空にうっすらと霊体のような状態のデバイスが現れる。
俺は手を伸ばした。
柄を掴んだ瞬間に『天羽々斬』は、質量を獲得し、青白い電光が太刀を纏わりつく。
刀身は深い漆黒で、まるで夜空そのものを切り取ったかのような光沢を放つ。
「うわぁ・・・、バチクソかっこいい・・・。」
ようやく俺のチートきたあああ!なんか見た目めっちゃ強そう!
「曲刀かしら、あまり見ない形ね。何ができるかわかる?」
「これは自分の国の武器で、太刀という分類の武器ですね。能力は・・・水、風、雷を操作できそうです。」
不思議な感覚で、形容する言葉が思いつかないが、感覚でこの『天羽々斬』の能力が分かる。
「さすが『嵐神』の紋章ね。扱える属性が多いわ。じゃあ、安全な場所に移動して、デバイスの能力を検証しましょう。」
「わかりました。エルサ『先輩』!」
エルサは嬉し恥ずかしげにもじもじしている。かわいい。
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