06. 紋章の出力がやばすぎて使い物になりません。

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06. 紋章の出力がやばすぎて使い物になりません。

エルサは俺を砦の近くにある広大な湖のほとりへと連れてきた。澄んだ水面が風に揺れ、遠くの山々が水面に映り込んでいる。 「ここなら思う存分、能力を試せるわ」エルサが満足げに言った。「さあ、デバイスを呼び出してみなさい」 「リブート、天羽々斬!」 空中に青白い光が走り、一振りの太刀が現れた。掴むと、手に心地よい重みを感じる。 「慎重に、少しずつ力を出してみて」 俺は頷き、湖に向かって構えた。ゆっくりと力を込めていく。 最初は水面がさざ波立つ程度だったが、徐々に大きな波が起こり始めた。そして、 「うわっ!」 突然、刀から巨大な水流が噴出し、津波のような濁流を作り出した。 「すごい威力...!」エルサが目を見開いている。「でも、もう少し制御を...」 「はい、頑張ります」俺は必死に集中する。少しずつだが、水流のコントロールができるようになってきた。 しばらく練習を続けると、ある程度自在に水を操れるようになった。大波を起こしたり、細い水流を作った。 「なかなかやるじゃない」エルサが感心したように言う。「でも、これが限界じゃないわよね?もっと出力を上げられるんじゃない?」 俺は頷いた。「はい、まだ余裕があります」 「じゃあ、出力の上限を探ってみましょう。でも気をつけてね、周囲への影響も考えないと」 エルサの言葉に従い、俺は再び湖に向かって構えた。今度は徐々に出力を上げていく。 最初は先ほどと同じ程度の水流だったが、すぐにそれを超えていった。5メートル、10メートル...水流はどんどん太くなっていく。 「すごい...!」エルサが声を上げる。 15メートルを超えたあたりから、周囲の空気が変わり始めた。水しぶきが風に乗って遠くまで飛んでいき、湖面全体が大きく波打ち始める。 20メートルを超えると、水流の周りに小さな竜巻のようなものが発生し始めた。湖畔の木々が激しく揺れ、葉が舞い散る。 「八雲、そろそろやめた方が...」エルサの声に緊張が混じる。 しかし俺はまだ限界を感じない。25メートル、30メートル... 突然、遠くで鳥の群れが慌てて飛び立つのが見えた。湖面は大きくうねり、岸辺に波が押し寄せ始める。 「八雲!もういい!これ以上は危険よ!」 エルサの叫び声で我に返った。確かにこれ以上続けると、周囲の環境に大きな影響を与えかねない。俺は急いで出力を落とし、水流を止めた。 「すごい威力ね...」エルサが呟いた。「でも、まだ限界には達してなかったでしょ?」 俺は頷いた。「はい、まだ余裕はありました。でも、これ以上やると本当に危険そうです」 「そうね。実戦では、周囲への影響も考えないといけないわ。でも、これだけの力があれば十分すぎるくらいよ。新人のくせに生意気だわ。」 エルサは少し不満そうだった。ぽっとでの新人に活躍されると面白くないよな。ごめんよ。 「あと、自分の使える紋章術には命名してあげたほうがいいわ。その紋章術を使うときに名前を言ってくれると連携しやすいからね。」 「なるほどですね。・・・では、この水流を放つ技は『ハイドロ ブラスト』と命名しようと思います。」 「うん。シンプルでいいと思うわ。」 エルサは俺の命名を気に入ってくれたようだった。 「さて、他の二つの属性も試してみましょうか」 俺は頷いた。残りの二つの属性にも意識を向ける。水属性はなかなかの出力だった。他の属性にも期待できそうだ。これからの訓練が楽しみになってきた。
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