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07. はじめてのにんむ
デバイスの使い方を学んでから、約1か月たった。
特魔隊3名の兵士が、砦の会議室に集まっていた。マルコ、エルサ、そして俺だ。
「さっき、ヘルマン指令からアルシャンの防壁を補修する命令があったよ。僕たち3人でアルシャンに向かってほしいって」
この砦で一番大柄な男マルコは、その体格の大きさに見合わない柔和な話し方をする。
補修?なんで俺たちが?
「B級魔獣の攻撃にはしばらく耐えられるように作った防壁のはずだけど、何があったのよ?」
なるほど、エルサは『大地の神』の紋章保持者だ、きっと彼女が能力を使って、石の防壁を築いたのだろう。
「アルシャンにB級魔獣の襲撃があったらしい、そしてB級魔獣との戦闘でその場にいたグスタフ隊長が防壁を一部破壊してしまったそうだよ。」
「あー、隊長がね、、、めんどくさいことしてくれたじゃない。」
ちなみにまだ、グスタフはスタットベルグ帰ってきていない。
どうやら、スタットベルグ周辺の小都市を回って、周囲の魔獣を掃討しているらしい。
小都市はスタットベルグほど堅牢ではないため、定期的に魔獣狩りをして間引く必要があるそうだ。
「グスタフ隊長はどんな人なんだ?」
ちなみに、俺は隊のメンバーと打ち解けて、タメ口で話すようになっている。
マルコが同じ平隊員だから、フラットに話そうと言ってくれたおかげだ。マルコいい奴。エルサは不服そうだったが。
「とおおーーーーっても自己中な男よ!今回も適当に戦って壊しちゃったに違いないわ。そしてあいつは責任転嫁で『お前の防壁がこんなヤワだと思わなかったぜ』とか嫌味なことを言ってくるわ!かけてもいい!」
「うわぁ・・・。それは嫌だな。」
まあまあとマルコがなだめる。
「明日、9時の鐘が鳴るころに、砦の正門に集合。1週間分の装備と食料を持参すること。良いかい?」
「「了解!」」
こうして俺の初遠征が始まるのであった。
~~~~~
そして翌日、俺たちは整備されていない山道を黙々と進んでいた。
「暇ね~、誰かさんが魔獣を全部倒しちゃうからやることがないわ。」
エルサによると、今回のアルシャン遠征はいつも以上に快調なようだった。
俺のデバイス『天羽々斬』が大活躍していた。
紋章術が使えるようになり、俺が一番最初に取り組んだ鍛錬は感知能力の獲得だ。
この世界でどれだけ強くなったとしても、おそらく急所への一撃を食らうと即死する。
よって、意識外の攻撃を対処できるようにすることを最優先で進めた結果、八雲は周囲100メートル程度は空気の流れを感知して、魔獣の位置を特定することができていた。
「いつか感知能力を拡大・精緻化、俺TUEEEEEしたいなぁ。」
俺はこの紋章術に『ディテクション』と命名した。
攻撃対象を検知したら。背後から忍び寄り、『天羽々斬』の雷攻撃『エレクトロ ランス』(命名俺)を放つ。これまでのC級魔獣は一撃で仕留めていた。
サーチアンドデストロイが最強
「楽なことはいいじゃないか。僕たちだけだと、魔獣の感知ができないし、やっぱり気づかれる前に先制攻撃できるのはかなり便利だね。」
「あまり調子に乗らないでよね!あたしだって、C級魔獣を1撃で倒すなんて楽勝なんだから!」
「わかっているよ。ーーーって、また何かいる。」
俺の感知範囲に巨大な生物の気配を感じる。C級と比較にならないほどの大きさだ。
「みんな、南西、俺たちの進路の先に、おそらくB級魔獣がいる。二足歩行の恐竜型だ。」
すると、マルコ、エルサは表情を引き締める。
「わかったよ。いつも通りの作戦で行こう。八雲は初めての連携だが、、、いけるかい?」
「ちょっと緊張するけど、がんばるよ。」
「やばかったら、後ろで見てていいからね~。あたしたちでもたぶん何とかできるから」
「B級はそんなに余裕ないでしょ。気を引き締めてね。」
俺たちはB級魔獣のいる方角へ向かった。
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