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08. B級魔獣
B級魔獣は森を抜けた先の平地で休息しているようだった。
俺たち3人は小声で作戦内容を確認する。
「ファーストアタックは八雲に任せる。攻撃後、B級魔獣が生きていたら、いつもの作戦通り戦おう。」
マルコは作戦を伝える。俺たちは「「了解」」と短く返した。
エルサはシャツの裾をたくしあげ、ウエストの『鎚紋』に手をかざす。エッチです。
「リブート、『ヘパイストス』」
エルサのデバイス、『ヘパイストス』は柄の長い両手持ちウォーハンマーだ。小さい女の子がこんなものを振り回すなんでギャップを感じる。
マルコは左手の甲にある『狼紋』に手をかざす。
「リブート」
マルコは地神の紋章のため、デバイスを持たない。彼は自前のバトルアックスを構える。特殊能力はないが、身体能力が数段向上する。
「いくぜ、『エレクトロ ランス』!」
準備ができたようなので、俺は雷の紋章術を放つ。青白い閃光が放たれ恐竜型B級魔獣に迫る。
雷速の攻撃は、すぐに魔獣の背後に着弾する。
「GYAAAAA」
魔獣の叫び声が響く。
「的中したけど、体が大きいせいか、まだ生きている!」
俺は報告する。
「よくやってくれたよ。1分くらいは動きが鈍らせられそうだね。」
マルコは俺をねぎらう。本当にいい奴だ。ありがとう。
「ようやくあたしの出番ね!」
そういって、エルサは『ヘパイストス』を構えながら魔獣に向かい疾走した。マルコと俺も続く。
「こっちを見なさい!。『岩石砲』!!」
エルサは2メートルの長さの岩石の円錐を魔獣に向けて放つ。放射線を描き魔獣に向かうが、避けられた。
エルサの岩石による質量攻撃を食らったら、魔獣も一撃で行動不能だろう。スピードはないが、パワーは恐ろしい。魔獣はエルサが自身を殺しうる最大の脅威と認識し、エルサを正面にとらえる。
俺とマルコは魔獣の両側でデバイスを構えた。魔獣は、一番の脅威であるエルサに向かい突進した。
「バカちんが!『岩壁』!」
魔獣の大顎がエルサをとらえる前に、岩の壁を目の前に生じ、魔獣は岩壁に衝突した。
「いくよ、八雲くん!」「オーケー!マルコ!」
隙の生じた魔獣の足元を狙う。俺は、『天羽々斬』で魔獣の左足を切り飛ばす。マルコは反対の足を切り飛ばした。
魔獣は自重を支えられなくなり、芋虫のように地面に転がる。
「ないすーーー!とどめよ!」
エルサは、自身の大槌を上段に構え、跳躍する。魔獣の頭蓋めがけて『ヘパイストス』を振り下ろした。
魔獣の頭蓋は砕け散り、傷の高速再生も止まった。
「終わりだね。」
マルコは戦闘の終了を告げた。
「悪くなかったわ。はじめてにしては順調に行ったんじゃない?」
エルサに褒めてもらえた、彼女が人を褒めるのは珍しい。
「まぁ。エルサに比べて自分の負担は少なかったから。魔獣と正面からやりあうエルサはやっぱりすごいよ」
正直な感想だった。あの巨大な魔獣の正面を受け持つなんて、相当な胆力がないとできないだろう。
俺は横から攻撃しているだけでも、正直かなり緊張した。
ただの高飛車金髪ツインテだと思っていたのに、思わぬ一面を見て、尊敬の念が高まる。
「ふん!当り前じゃない!覚悟が違うのよ!覚悟が!」
顔を若干赤らめ、エルサはそっぽを向いた。かわいい。
「確かにいい戦闘だったね。八雲くんは初めてなのに、ちゃんと動けていたし。エルサはいつも通り正面を受け持ってくれて助かったよ。」
マルコはいい感じにまとめる。
こうして俺の初めての戦闘は無事勝利に終わったのである。
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