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01. 異世界へ転移したけど、記憶を元の世界に置いてきてしまったようです。
俺の名前は『榊 八雲』しがない大学生、20歳・・・のはずだ。
財布に入っていた学生証にはそのように書いてあった。
「そう、お察しの通り、俺は記憶喪失。」
記憶喪失という状況でもだいぶカオスだが、俺の視界には状況をさらにカオスにするものが映りこんでいた。
「うわぁー・・・、なんだあれ。特撮の撮影中かなー?」
眼前には、ティラノサウルスくらい大きな『白い化け物』と中世ヨーロッパ風の兵士たちとドンパチしていた。
白い化け物は、再生能力があるようだ。兵士たちが与えた傷は、白色の蒸気を発しながら凄まじい速度で修復されている。
このままではジリ貧か?
そう思った矢先、1人の少女が増援に現れた。
金髪ツインテールが風になびく。
この場にはそぐわない可愛らしい少女だった。
少女は虚空からウォーハンマーを取り出し、地面に叩きつけた。
そうすると、地面から先のとがった石柱が現れ白い化け物を襲う。
石柱が白い化け物の頭部を貫いた。
さすがに再生しない。白い化け物は息絶えたようだ。
「すげー。今の魔法だよな・・・かっこよ。」
なぁ、みんな?
そうゆうことだよな?
間違いないよな?
俺、今、『剣と魔法のファンタジー異世界』にいるんだよな???
「・・・しゃああああ!!!、異世界を堪能するぞーーー!!!」
俺は喜びを堪えられず、叫んだ。
さっきまで戦闘していた兵士たちの視線が集まる。
・・・興奮しすぎた。
金髪ツイン少女がこちらに来て、俺の目の前で仁王立ちする。
可愛らしい少女だった。
俺の全身を観察するように、少し釣り目の大きな瞳がキョロキョロと動く。
少女はジーっと見つめた後、その薄い唇を開いた。
「・・・--!?-・・・-、・・--・?」
「え?」
「・・-・---!?」
あ、やべ。何話してるか分からない。
少女の様子から俺が職質(?)されていることは分かる。
だが、俺にはどうすることもできない。
ふと、少女が何かに気づいたように俺の左手を取った。
細くて柔らかな指の感触に左手が包まれる。
少女は俺の『左手の甲』を見つめた。
「・--!?、-・・・-、・・--・!!!」
「俺の左手に何かあるのか?」
そこには見覚えのない紋様が浮かんでいた。
これは・・・『雲』だろうか。。。
モクモクとした雲ではなく、和風、霞文様に近い。
抽象度が高すぎて確信が持てないが、俺は本能的に『雲』だと認識した。
「タトゥーか?なんとなく自分で入れたものではない気がするが・・・。この世界に転移する際に刻まれたのか?」
おそらく、この世界に転移した特典。いわゆるチートスキルに関係するものだろう。
そうに違いない。そうでないと生きて行ける気がしない。
しかし、チートスキルのヒントは得られたが、全く使い方が分からん。
状況は変わらない。なんとかこの状況を打開しないと。
「アー、アー、ジャパニーズジャパニーズ、アヤシクナイヨ!!!」
少女は周囲の兵士たちに何か指示を出したようだ。
屈強な兵士たちが俺のサイドを陣取り、俺の両手首を掴んだ。
俺は拘束された。
神様や、翻訳くらいは転移特典として付けておいてくれよ。。。
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