アイサツはただの言葉の羅列

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「すいません。いつもこっちの方見てますよね?」 明らかに敵意を持った声だ。確かに心当たりはあるが、決して私は何か変な意図をもって彼女を見ていたわけではないのだ。 確かに彼女がスマホで「家庭教師 バイト」やら調べていたのは知っているが、私はストーカーでもないしましてや彼女に危害を加えようなどはまんざら思ってもいない。 「いや、それは、その...いつも勉強してるなって思って。あと、とてもきれいだなって」 弱弱しく、か細く、まるで隅に追い詰められたネズミのように答える。 「本当?」 「はい」 「良かった~。だってさ最近変質者とかいるじゃん。このカフェ来たらいつも目線感じるから、別のとこ行ったりしてたんだけどどうしても水曜日と金曜日だけは他が開いてなかったり人多くてここ行くしかなかったんだよ。それでいつも目線を感じる時間になって周りを見てたら何回かアンタと目が合ったってわけ。それで声掛けたらきれいだからみてましたって正直すぎだし、って私しゃべりすぎじゃない?」 「はい、そうですね」 「でもあんたもいつも勉強してるでしょう?ちょっと見せてみなさいよ。こう見えても私一応勉強できるんだからね。」 そう言って参考書を机に出す。 「うわ懐かし。確率とか組み合わせとかやってたわ。これC使うよりP使う方がいいとかあった。」 相変わらずよくしゃべる人だと思う。しかし、彼女の話よりもまじかで見る彼女の顔を目に焼き付けないでいる暇はなかった。 「あ、しゃべりすぎちゃった。ごめんね。アンタもアンタの勉強あるだろうから頑張りなよ、ってか名前なんていうの?って私から名乗らなきゃか。私は糸乃(しの)」 「小菊...です。」 「小菊ちゃん?よろしく。」 「よろしく...?」 「またね」 彼女はそう言って自分の席に戻っていく。そんな彼女に窓から逆行がさしていて後ろ姿は見えない。。その美しい残像を残して数学の参考書を見つめた。 「ただいま」 今日は何も帰って来ない。母も若干諦めたようだ。 私の声が暗い玄関と廊下に響く。なんとも不自然。そんな感じだ。
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