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 翌日の月曜日、同じ講義を取っているミズタがいきなり俺の隣の席にやってきた。すっかり失恋から立ち直ったらしく、いつもの好奇心に輝く目で俺を見た。 「恋のお悩み?」  気持ち悪い声で訊いてくる。 「……なんだよ」 「彼氏。いやあーすげえ目で睨まれちったからさー」 「ふざけんな」  言い返しながら、なぜか胸がザワついた。  あの日、俺は不覚にも彼の肩にもたれて眠ってしまっていた。気が付くと俺の身体は暖かいジャケットに覆われていて、彼は薄いニット姿で俺に肩を貸したまま、静かに本を読んでいた。  俺は慌てて彼に謝り、ジャケットを返すと用事があると言って逃げるように公園を出た。恥ずかしくて彼の顔が見られなかった。  けれど身体を離した瞬間、逃げていってしまったぬくもりが、なぜか寂しいような気がして、少し切なくなった。  あんなおかしなヤツなのに。  そばにいると安心するとか。  どうかしてるだろ――。  ミズタは面白そうに近づいてきて、俺の顔を覗き込む。 「もうヘンタイした?」  俺はミズタの頭を軽くはたいた。 「ま、いいや。今度の金曜日、合同コンパニーやるからおまえも来い」 「またコンパか。俺はいいや、やめとく」 「えーなんでよぉ、あっ、あれか、束縛系彼氏!」 「マジでやめろ」 「こわーい、みっくん!」 「おまえ、彼女のことはいいのか」 「ひゃー、それ言わないでー、俺はもう新しい恋に行くの。だから誘ってるんじゃんかあ」  合コンねえ、と行く気もないのに呟いてみる。するとあいつの顔が浮かんできて奇妙な気持ちになった。なんだか分からない俺たちの関係はいつまで続くのだろうか。不毛としかいいようのない時間だ。けれどコンパに行くよりは、あの静かな川辺にいるほうがずっとマシな気がした。
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