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しばらくすると、片桐さんの寝息が聞こえた。とても静かで、この距離に居ないと聞き逃してしまうだろう。
「(慣れている……)」
やはり眠りの神様は私から遠のいてしまって、いっそ、手を離してみてはどうかと考えたけれど、気づかれた場合が恐ろしくて、出来なかった。
眠らなければと思う日に限って眠れない呪いは何時になれば解けるのか。
ちらりと隣を見た。片桐さんの横顔があるだけだった。
「(綺麗……)」
計算され尽くした完璧なEラインが美しい。
そういえば、今日、
「(ピアス、付けてない……)」
気にしなくていいと言ってくれた。
私と母を認知してくれた。
知らない一面ばかりを見せてくれた。
『二度と恋愛をする気がないので』
「(なんで、恋愛はしないんだろう……)」
──……まだ私は彼について知らないことばかりだ……。
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