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何もない大地に。
ある人が、
積み上げ、積み上げ、
山を作る。
一念貫き、
竹の子伸びるがごとく、
上へ上へと伸びていく。
また、ある人は、
作っては平し、作っては平し、
土台を広げて山を作る。
なかなか、
山の形は見えないが、
どんどん裾野が広がっていく。
また、ある人は
叩いて、踏み締め、
固い崩れ落ちない山を作る。
強固な山の表面を
風が通り過ぎ、
水が流れ過ぎていく。
また、ある人は、
最新の機械、最新の土壌、最新の薬剤
最新の技術で山を作る。
これが
快適な暮らしやすい
山らしいそうだ。……人にとって。
たくさんの数の山を作る人もいる。
その分、小さいけどね。
きれいに山の形を整える人もいる。
明かりで山を装飾する人もいる。
密林のように山に植物を育てる人もいる。
小高い場所に、登山道や遊べる場所を作る人もいる。
いろんな山ができる。
いろんな山ができると、
いろんな山が連なって、
少し、山脈らしくはなった。
が、それでもまだ「大きな山」と呼ぶには心もとなく
時代と共に風化し消えていく。
それなのに、
また、山を作る。
繰り返して、繰り返して
諦めず、
呆れられるほど繰り返して、
何故だか山をつくる。
何故だ?
ドドドと聞こえぬ音がする。
グググと見えぬ力がかかり、
どろりどろりと深くでうねる。
たった一つ。
たったひとつの
純粋で、
まぎれもない、
「好き」という感情が、
地殻の中で混じり合っていた。
目に見えず、感じることもできず、音も聞こえないが
それは確かに
激しくぶつかり、熱く燃え盛り、
どろろどろりとうごめいている。
そして、信じられぬほどの力で、
地殻を動かし始めるのだ。
少しずつ、少しずつ、
確かに少しずつ。
混じり合った「好き」という
膨大なエネルギーが
全てを飲み込み、
全てを支え、
動き、隆起する。
誰にも止められぬ隆起が、
山をつくる。
好きという感情が集まって、
山ができる。
誰かの「好き」が
みんなの「好き」と混じり合い。
山ができる。
大きな山ができる。
少しずつ。少しずつ。
静かに少しずつ。
Fin
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