鹿見山の思い出

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「大型ショッピングモール建設にあたっては地元住民の猛反対があって、あの時はホント大変だったんだぜ」 役場勤めの悠馬は行政側の立場だけど地元住民の気持ちもわかるから、その仲介役は気苦労が絶えなかったんだろうなと想像がつく。 鹿見山という呼び方の由来について、こちら側の集落の人から聞いた話では、昔はこの山に鹿が生息していて『鹿を見ることが出来る山』だから、鹿見山ということだ。 悠馬が言うことには『形が笠に見える山』だから、見笠山と呼んでいるらしい。 鹿見山はこの近辺では目立つ山で、綺麗な円すい形が笠に似ている、雑木林が生い茂っている山だ。 よく言えば手付かずの自然が残っている、悪く言えば管理がなされていない山。 ただ、周りに繁華街もないこの辺鄙(へんぴ)な土地の子供たちにとっては格好の遊び場になっている。 この山の呼び方をめぐる論争は一種のお約束事となっており、正式名称を知らない僕たちは「結局、どっちでも呼びやすい方でいいじゃん」ということで落ち着くんだけど……。
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