鹿見山の思い出

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じいちゃんの話では、その昔、疫病が流行り、たくさんの人が亡くなった。 接触したら感染する、感染したら死亡する、と思われていたから、葬式はもとより十分な供養も出来なかったそうだ。 その当時の人たちにできることは、人里離れた場所に亡くなった人を集めて土を被せることだけだった。 それを繰り返し続けて、山が出来上がったということだ。 僕が見つけた白い棒は、やはり人骨だった。 父親とじいちゃんで埋めなおして、子供たちには鹿の骨だったと伝えたのだ。 じいちゃんも子供の頃に聞いた話だから半信半疑だったらしいけど、今回の件を聞いて本当だったと信じたそうだ。 僕たちは屍がたくさん埋まっていた山で遊んでいたことになる。 『ばねをつかさねてできた山』だから、鹿見山と呼んでいた。 『しかばねをつねてできた山』だから、見笠山と呼んでいた。 了
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