鹿見山の思い出

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鹿見山(しかみやま)を切り崩して、大型ショッピングモール作るってホント?」 大学の夏休みを利用して、子供時代を過ごしたじいちゃん家に帰って来ている僕は、さっき聞いた噂話を同級生に確認してみる。 仲良し三人組として日が暮れるまで鹿見山で一緒に遊んでいた悠馬(ゆうま)真治(しんじ)が、僕のじいちゃん家に遊びに来ていたからだ。 ちょっとした同窓会みたいなもので、昔話や近況報告なんかをしていた中で出た、ちょっとした話題の一つ。 噂の提供者であるじいちゃんは縁側で昼寝をしている。 「いや、あれは見笠山(みかさやま)だからっ!」 僕たち三人組の中で一人だけ地元に残り、役場に勤めている悠馬がツッコむ。 なあ、真治!と悠馬が同意を求めるのは、真治も悠馬と同じく、鹿見山を挟んだ向こう側の集落出身だからだ。 あの山の呼び方については一悶着あり、僕のじいちゃん家があるこちらの集落では鹿見山と呼んでいて、悠馬と真治の家のあるあちら側の集落では見笠山と呼んでいる。 同じ山のことなのに、昔から呼び方の言い争いは絶えなかった。 「確かに昔から見笠山って呼んでいるけどさ、本当の名前は知らないんだよな」 僕たちの中で一番頭が良く落ち着いている真治は、僕と悠馬の意見が分かれた時は中立の立場に立つことが多い。 真治は僕より良い大学に入り、大学院を目指しているそうだ。 僕と同じで大学の夏休みを利用して実家に帰省している。
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