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 HALO(ヘイロー)……光の輪、(かさ)ではなく、またはロシア製ヘリコプターのコードネームでもなく、宗教画のモチーフでもなく、ビヨンセの楽曲でもない。  (サント)パルーシア学園中等部の特殊部隊アンティセプティック・チームのメンバー、来栖(くるす)治子(はるこ)と、彼女に付き従うカメラマンの岡谷の二人は、航空部が操縦する輸送機C-1に乗っていた……ほかにコットンキャンディ・チーム全員も。  「みんな、そろそろパリ郊外よ。準備はできていて?」  無線で航空部の副操縦士(コパイロット)が確認をとった。  コットンキャンディ・チームのリーダー、千本(ちもと)がチームを代表して、OKです、と答える。  「アンティセプティック・チームのお二人は?」  大丈夫です、と治子は応答する。本当はアンティセプティック・チームのメンバーは治子だけで、岡谷はアンティセプティック・チーム付きのカメラマンなのだが。  C-1輸送機後部のカーゴランプが開き、深夜のパリ郊外が見える。スマートフォンアプリの緯度経度の六桁の数字が二つ、目まぐるしく変化していく……。機体は風を正面から受けるように微調整をしながら飛んでゆく。  カーゴランプが開ききると、まずはコットンキャンディ・チームの一人と、治子が二人して荷物を載せたパラシュート付きパレットを地上へと落とす。  機体の高度は8,200メートル以上。  この高高度から降下し、約二分間の自由落下ののち、ぎりぎりの高度でパラシュートを開傘する。それが高高度降下低高度開傘、イニシャルをとってHALO(ヘイロー)である。  コットンキャンディ・チームから降下してゆく。
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