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「どんな場所なんですか? その、セーヌ左岸は」
「セーヌ川のなかにシテ島やサン=ルイ島があるけれど、そのあたりに小さな古書店が並んでいるのよ」
「すごく撮ってみたいけど、さすがにウエディングドレスでは合わないな……」
そうよねえ、と岡谷の反応にうなずく治子。
「──でも、この私服でよければ、そのセーヌ左岸の古書店で撮ってもらいたいな、というかせっかくだもの、記念写真としてどうかしらね」
それはいい写真になると思う、とマルセル。
結局のところ、まずはラバースーツとウエディングドレスの撮影を確保してあったスタジオで撮影した。
治子は生まれてはじめて着るウエディングドレスに感激していた。宝冠と面紗を着用して着替え終わると、気分が高揚した。
メイクはマルセルが担当したのだが、ナチュラルな感じに……と言いながら、日本でのナチュラル・メイクと比べるとかなり濃い目のメイクだった。
「許可が下りてから改めて撮影するのもいいわね」
治子が別室でウエディングドレスからラバースーツに着替えているあいだにマルセルが岡谷に言った。
ラバースーツは長袖のとノースリーブのものと二つのパターンがあり、とりあえずは長袖のラバースーツ二ヶ月ぶん、二枚の写真を撮った。といっても岡谷やマルセルが指示を出したり、治子も自分からポーズをとったり動いたりと、岡谷は一秒に七コマ撮影できるモードで撮っていくため、データはSDXCカードをかなりの勢いで埋めてゆく。
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