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 来栖治子とカメラマンの岡谷は、HALOの装備チェックを改めておこない、そしてC-1輸送機のカーゴランプを蹴って空へ舞う。  なぜこんな難易度の高い降下を選んだのかは、コットンキャンディ・チーム、来栖治子と岡谷、それぞれの任務に理由があった。  コットンキャンディ・チームはフランスで行われている国際イベントのため、要人の警護につく。その任務はさまざまな意味で極秘扱いだった。もっとも卑近な理由でいえば、特殊部隊とはいえ、極東の女子中学生に守ってもらう、というのがある種の屈辱になる、そう考える向きもあるからだった。  HALO降下なら確実に入国したのが露見しない。  来栖治子もそうなのだが、岡谷もHALOの訓練はかなり念を入れておこなっていた。コットンキャンディ・チームのメンバーたちがパラシュートを開傘するのが見えた。  治子は、岡谷と手を繋いで自由落下をしていた。  「岡谷さん、そろそろパラシュートを開いて」  「Copy(了解)」と岡谷。  岡谷は開傘して落下速度ががくんと落ち、治子はほんの数瞬一人で自由落下をする。限界までひっぱり、パラシュートを開く──。  来栖治子と岡谷は、コットンキャンディ・チームの重要任務に文字通り便乗していた。治子と岡谷の任務は極秘ではあるものの、コットンキャンディ・チームのように切迫したものではない。  人外(にんがい)へと憎悪を(たぎ)らせている人類純血保護機構(HPPI)の総攻撃からまだまもない。  人外(にんがい)の生徒が数多く在学している(サント)パルーシア学園は、人類純血保護機構(HPPI)の魔界ポータル侵入を一時は許してしまった。彼らの余力も尽きかけていなかったら、(サント)パルーシア学園はどうなってしまったか……。
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