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VI
「ねえ、見て見て岡谷さん……! エヴァの漫画があるよ……それも中国語、これ?」
とある古書肆の店頭で来栖治子ははしゃいでいた。たぶん観光客向けの古書肆なのだろう。日本語の本、英語の本を多く扱うお店で、古本以外だとフランスの古い絵葉書なども扱っている。
治子の手にした漫画の表紙は『新世紀 福音戰士』。
「治子ちゃん、それは中国語だけど繁体字、台湾版だよ、きっと」
と岡谷。彼も本を手にとって眺めたいと思いながらも、今は治子の撮影に集中していた。
セーヌ左岸の古書店は、仕事がはじまるのも皆気まぐれで、だらだらと本箱にかけられた雨よけのシートをあげ、横長の、そのなかに古書が詰まった箱の蓋を開くのもてんでばらばらだった。
早めに開店準備にとりかかっていたのは、観光客向けの古書肆なのだろう。
古書肆の店頭で、ピンクの髪を揺らし、バイカラーのワンピースを着こなした来栖治子を岡谷はやはり撮りためた。
マルセルも赤と黒の……とりわけ赤の発色がきれいな……ジャンパースカート姿だった。
「治子は英語できるほう?」
『新世紀エヴァンゲリオン』の台湾版本を買って、今度は別の古書肆の英字本箱を興味津々とのぞき込む治子にマルセルはたずねた。
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