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 「はい、極秘任務ですからね、こちらも」と治子。  それと、とマルセルはつけ加えた。  「わたしも(サント)パルーシア学園で学んでいたのよ。有事の際には自分の身ぐらいは守れる程度だけど──だから、海外の(サント)パルーシアOGって臆さずにどうか敬語は抜きでお願い。とくに治子はお姉さんにでも話すつもりで話してくれるとわたしも嬉しいな」  ああ、情報伝達に敬語はあいまいななにかや、情報の遅延などを持ち込んじゃうから……と治子は感心した。  それを岡谷に伝えると、なるほどな、と。マルセルは岡谷より少し歳上のようだった。  パリ郊外、南の14区へ向かい、ポール・フォール通りの途中にあるホテル・バージナにチェック・インする。もちろん治子と岡谷それぞれに予約してあった。  ホテルの前にマルセルが車を停める。  「とりあえず今夜はゆっくりして。明日はわたしが午前九時に迎えにくるから。では、ごきげんよう」  ごきげんよう、と治子も岡谷も返す。  「マルセルさん、日本語本当にお上手でしたね。わたしの名前の発音がちゃんとできるんでびっくりしちゃった」  ああ、と岡谷。  「フランス語だと語頭の(アッシュ)は発音しないから……」  「そうそう、『アルコ』って呼ばれるんだろうなって思ってたんです……ウッドベースのアルコ奏法じゃないんだから……」  実際に、アンティセプティック・チームでジャズを演るときはベーシストの治子はそう言って笑った。
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