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 まるで3Dスキャナのように、来栖(くるす)治子(はるこ)の身体は採寸され、本任務で着る彼女の服は仕立てあげられていた。身長や体重、スリーサイズから、肩幅、また下丈や身幅、わたり幅まで。  アンティセプティック・チームの隊長、小佐野美潮(みしお)が学業と特殊部隊稼業のかたわら、なかば趣味で起業した小さな出版社、書肆(しょし)こむぎは毎年、美潮を含め隊員のカレンダーも出版している。  「まさかそんな依頼が海外からくるとは思わなかったよ」  と、ホテルのロビーでマルセルの迎えを待つ岡谷が治子につぶやいた。  「わたしだって同感です」  治子のことばに岡谷はうなずく。  来栖治子のカレンダーは、書肆こむぎから『おすましはるこ』というタイトルで出版される。このカレンダーの撮影も岡谷だった。  クラシカル・ロリータ服をメインに……これは他の隊員も撮影した現場ではあるが……旧古河庭園、ひたち海浜公園、英国村、向島百花園、山下公園、小石川後楽園、新宿御苑、都立日比谷公園、それに秋葉原や神田神保町……がロケ地となった。  ただし、八月のページは、他の隊員がみんな浜辺で水着写真なのはいいとして、治子は水着は水着なのだが、あまりセクシーでない濃緑色のワンピース水着だった。  それ以外はカレンダー『おすましはるこ』の内容は前述したようにほぼクラシカル・ロリータ姿である。  この、通称クラロリばかりの治子のカレンダー、去年のもそうであったが、男子のは正直かんばしいものではない。
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