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「本当に、それで大丈夫かな? なにせ例の黒服なんて欧州最大のタブーでは?」
と、岡谷がマルセルに尋ねた。そのフェティッシュ・ファッションのカレンダーに使う写真の一部はすでに撮ってある。岡谷は画像作業用のノートパソコンと、数枚の1TB容量、SDXCカードをいくつか持参していた。
まったく画像データを圧縮や加工していないRAW形式のデータでも、1TBなら約50,000枚が撮れる計算だが、岡谷は製作過程でなにかあってはたいへんなので、別のSDXCカードやパソコンのハードディスクにも二重にバックアップをとっている。
「販路はもう信頼のおける業者さんに委託してあるの。本当に地下出版ね。たしかに、治子はエディシオン・ヴォル・ド・ニュイから刊行する、エディシオン・ノワール……英語ならブラック・エディション……の企画にぴったりだわ。写真写りがとてもよさそう。まさにフォトジェニック、インスタジェニック……!」
嬉しい! と、治子。
「ただ、マルセル、わたしはああいう制服が似合うほど、Sっ気があるわけでもないの。なんか誤解されてるな……」
「それでも需要があるのよ、Mっ気のある男性たちから。それに、男尊女卑的な社会への反撃、恰好よいヒロインとして」
マルセルは運転をしながら微笑んだ。治子はうーん、と少し考え込んでいる。
シトロエンC3は、夜間飛行舎の一階ガレージに停まった。すぐにガレージのシャッターが下りる。
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