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ハルとシイのお手柄
猫さんあのね…
あたしは洗い物を濯ぎながら思い切って切り出す
これは前々から思っていた事だ
「どうしました?麻婆豆腐辛かったですか?」
あたしより頭ひとつ以上背の高い、猫さんが洗う手を止めて覗き込んでくれる
ここはカフェ美宙のキッチンだ
ち、違いますっ!
何と言うか…どうしても子供扱いされてる感が強い、強過ぎる!
お昼ごはんであたし達用に作ってくれた甘口しか食べてませんから!
猫さん、あたし、ほしい物があるの…
その言葉にメガネの奥の瞳を丸くしたかと思うと…何故だかうんうんと頷いて…
「よし、買いましょう!是非買いましょう!何なら今すぐでも買いに行きましょう!何がほしいんです?シイ!洗い物の続きをお願いします!ハルは濯ぎの続きを!」
え?それは…ちょっと性急過ぎません?
あたし何がほしいかも言ってませんし…
あ、ハルさんとシイさんがリビングからもう出てきちゃってるし!
「パパ、荒事ならウチに任せてって!今度はどこのバカが我が家にケンカ売りに来たの?隣か!また隣の国が性懲りもなくか!」
「ししょー!待ってたっす!何処のどいつが来ようとも、シイちゃんとあたしがいる限り、我が家には一歩も近寄らせないっす!」
…ハルさんとシイさんが揃って心底嬉しそうなのは何故なんだろう…
「あのね、アンツィオもマグナムも必要ありませんからね?大体食器洗いをお願いしたのに、どうして隣国が攻めてくる話しにすり替わってるんですか〜?」
猫さんが呆れるのも無理がない…
シイさんは猫さんの身長並みに長いライフルを、ハルさんは銀色に輝く回転式の拳銃を、両手に持って出て来たのだから
「え?違うの?沖合いに怪しそうな偽装漁船でも見つけたのかとウチは思ったんだけど…」
「マジっすか?悪逆非道の輩を撃つ仕事を任せるって言われたような気がしたんすけど…」
シイさんが片膝立ちで、ハルさんは床に伏せた状態で店内を…
お二人は優しいお姉さんで頼りになるんだけど
微妙に方向性がズレてると言うか…物事を鉛弾で片付けようとする傾向にあると言うか…
「そ、そっすか…あたしはてっきり隣国が怪しい動きをしてるからだとばかり…」
「今朝沖合いに見覚えのないブイが浮かんでたから撃って爆破したけど…パパまずかった?」
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