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生徒会室での秘密のお話
花蘭は、双眼鏡片手に、じっと窓から外を見つめている。
冷たく笑って、アリスの方を振り返る。
「網にかかりそうです。間違いなく朝井悠馬は、ニーチェのコンテストに参加するでしょう。参加しても優勝は出来ない。逆に審査員からは酷評され、クラスカースト最底辺から地獄の底へまっしぐらです」
「本当に朝井悠馬は参加するの?」
アリスが脚を組みなおす。パープルカラーのレースのショーツがかすかに見えた。そして雪のように白く水晶のようにキラキラと輝く太腿がなまめかしく揺れた。
「私はそう判断しました」
「だけどさ。あの少年、高嶺の花の私に全然関心なんか持ってないんだよ……。陰キャラでボッチのくせに生意気。それでも私の婚約者探しのコンテストに参加するの?」
「優勝したら会長の花婿候補になれますが、すぐ婚約と決まったわけではありません。第一、それでは会長が困るでしょう」
「確かに。あの少年、成績はよくても一番というワケじゃないし、陰キャラ、ボッチなんかに、私も興味はなし」
「身元調査にもありましたが、朝井は「現代社会」の教師だった父親の影響で、ニーチェなどドイツの学者には詳しいようです。」
「そっか。それならニーチェの論文発表会といったら、きっと朝井は参加するか!」
「優勝すれば、大学の学費が全額援助されます。両親もおらず、みすぼらしいコーポに住んでいるような朝井なら是非とも優勝を狙ってくるでしょう。上杉明日香はシングルマザーの家庭で、エレベーターもない古いマンションに住んでいます。朝井の進学を助けるどころではありません」
「そっか。花蘭の言う通りだと思う。金欲しさに参加し、優勝も出来ずに恥をかけばいいじゃん」
「朝井がコンテストで優勝を逃し、私たちのイエスマンの審査員から徹底的に論文の内容を非難されれば、プライドもズタズタにされ、夢破れた朝井が最底辺まで落ち込むのは間違いありません。朝井が落ち込めば、上杉明日香のショックも大きく、定期テストに集中できないでしょう。会長! いよいよあなたが定期テストで一番になるときです」
黒薔薇アリスが満足そうにうなずく。
「アメリカの雑誌『国際経済』が私のことを取材に来る。財閥令嬢が定期テスト二位なんて、絶対にムリ。ママが許してくれない。黒薔薇財閥の存在感を全国にアピールし、わたしの婚約者候補を探すコンテストを、上杉明日香追放のため利用するなんて、花蘭って本当に天才。私って幸せ」
花蘭も満足そうに大きくうなずく。
「会長、もう一回『天才』とおっしゃってくれますが?」
「いいけど。花蘭ってすごいわ! 天才!」
「いいなあ、この響き。ウキウキワクワク。それじゃあ、もう一回」
「いいよ。花蘭って天才!」
「ありがとうございます。それじゃあ、最後にもう一回」
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