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ニーチェへ挑戦しよう
「それから僕、実は哲学者のフリードリッヒ・ニーチェより、ドイツのミステリー作家のカルル・ニーチェの方が詳しいんです。父の残したメモにも出てきます。フリードリッヒ・ニーチェほどではないけれど、ヨーロッパでは、ミステリー作家として、よく知られてるんです。ただ日本語の訳は出ていません。それにニーチェという名字の有名人はほかにもいるんです」
急に明日香が悠馬の右手を握った。
「朝井くん」
悠馬の身体が硬直。またまた顔が真っ赤。
「参加しようね、このコンテスト」
「えっ、そんな! 僕、絶対出来ません。だって黒薔薇会長には興味ありません。いくら大学の学費が出してもらえるといっても、関係ない人の婚約者候補にはなれません」
「それはよく分かってる」
明日香が悠馬の右手を握り直す。
「でもね、絶対参加しようね」
「あの、その……。先輩、そんなこと僕に言ったって……」
「これはね。私のために、そして朝井くんの高嶺の花の綺集院さんのために」
悠馬はハッとしたように明日香の顔を見つめた。
「朝井くん。私のこと信じて、このコンテストに参加しよう」
明日香がささやく。悠馬はゆっくりとうなずいた。
何という感動的な光景だろう。だがいくらニーチェの唱えた「強い意志」でコンテストに参加しても、優勝なんか難しそう。
どうする、悠馬? 明日香には何か作戦があるのだろうか?
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