高嶺の花からの応援

1/1
前へ
/64ページ
次へ

高嶺の花からの応援

<朝井くんなら大丈夫>  悠馬は香蓮の言葉を胸に試験に挑む。  高い塀に囲まれた白亜の建物を見たとき、悠馬は今までになく緊張した。  個別に試験、面接をするということで、応接室でひとりだけ試験を受けた。  そして二週間後。「奨学生に選ばれた」と通知があった。学費はもとより、そのほかの費用も一切無料ということだった。要するに購買で買うパンとか、食堂でとる昼食の代金以外、一切払うお金もないという説明だった。自分で用意するのは修学旅行や通学の費用だけということだった。  これなら、悠馬も安心して三年間、王道高校に通学出来る。野田先生の驚きは云うまでない。   「ヒエーッ、最初から先生は君が選ばれると思っていたよ。この前、きついことを言ったのは、君が油断をしないための愛の鞭だったんだ。頼む、信じてくれ。本当だ」    あまりにも信じられない説明だった。  悠馬はすぐに香蓮へ、心をこめてお礼を書いた。香蓮からはすぐ返事が送られてきた。 <……短い間に、筆の使い方がものすごく上達しましたね。この美しい文字で、朝井君の王道高校進学の報告を聞き、私、とっても嬉しいです。  ごめんなさい。これからは忙しくてなかなか返事は書けませんが、きちんと近況を手紙に書いて送ってくれますか。  なかなか返事は書けないけれど、ちゃんと朝井くんのことを見守っていますからね。だから朝井くんは今まで通り、困っている人に手を差し伸べる心の優しい少年でいてください>  こうして朝井悠馬は、私立の名門校の王道高校へ入学したのである。  悠馬の高嶺の花。それは一度も会ったこともない綺集院財閥の令嬢だったのだ。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加