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「ボッチ」の悠馬とイケメンの松下
上杉明日香と朝井悠馬。二年、一年の「陰キャラ」「ボッチ」でクラスカースト最底辺。
このふたりが、どうして春日高校で再会することになったのか? 今から説明してみよう。
それは入学式から半月ほど経った四月の中旬、昼の休憩時間のことだった。クラスカースト最底辺の椅子が早くも定着していた悠馬は、ボッチで過ごす長い休憩時間がたまらなくて教室を出た。
それに教室にいたら、クラスカーストトップの生徒たちに、どんな言いがかりをつけられるかもしれなかった。
「おい、『ボッチ』」
女子たちと弁当を食べていたイケメンの松下卓也が声をかけてきた。一年特進クラスのクラス委員である。いつも取り巻きやファンの女子に囲まれている。父親は経済産業省の官僚で、次期東京都知事選に立候補するとも、衆議院選挙に出馬するとも噂されている。
「みんなにドリンク買ってきてくれないか? 金は今渡す」
「悪いけど、そんなこと出来ない」
「おいっ」
「自分で行ってよ」
「てめえ」
松下が席を立ちかける。あわてて女子たちが止める。悠馬は下を向いたまま、おちょぼ口を開ける。
「あんまりしつこいと僕、先生に報告するよ」
「チッ、陰キャラヤロー」
「松下くん。あんなヤツ、ほっといて」
「タッくん、相手にしないで……」
「うん、分かったよ。消えろ、朝井。二度と戻ってくるな」
松下に言われなくても、五時間目までは戻らないつもりだった。悠馬が教室を出ると、松下が回りの生徒たちを見回す。
「本当にアタマにくるヤツだな。オレたちと仲よくする気なんてないんだ。なんであんな貧乏人が王道高校なんかに来てるんだ。ふざけんなよ」
「ホント、ホント」
「許せないよね」
「でも心配ないって」
「あんな陰キャラ、簡単に追い込めるよ」
「一ノ瀬さん、本当?」
「タッくん、王道高校tのSNS知ってるでしょう。表じゃない方の……」
「裏のSNS」
「あっ! 聞いたことある」
「そこで朝井の噂をばらまくんだよ」
「それ、絶対使える」
「生徒指導の教師も、こっそりのぞいてるからサ。すごく効果あるんじゃない」
「もうタッくんに逆らえないくらい、追いつめちゃおう」
「あいつが知らないと言ったってサ。うちらがハッキリ見たっていえばいいもん」
悠馬はパシリを断固断っているが、それを許せないクラスメイトもいる。入学早々、悠馬には危機が迫っていたのだ。
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