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明日香は悠馬を離しません
ピーチのような甘い香りが鼻をつく。
悠馬は少しだけ目を開けた。
次の瞬間、甘く柔らかい唇が悠馬の口を塞いでいた。
旧校舎の旧応接室のソファ。明日香はソファに腰を下ろしたまま、あおむけになった悠馬を膝枕していた。明日香ったら、これ以上にない幸せいっぱいの表情。悠馬に五分以上、ディープキッスをして、それからゆっくりと顔を上げた。
眼鏡の奥の目が、悠馬を優しく見つめている。
「先輩。ぼ、僕」
「私、二年特進クラスの上杉明日香」
「上杉先輩、すみません」
悠馬はマシュマロのように柔らかくて弾力性のある太腿の枕に頭を乗せていた。悠馬はあわててソファの上に起き上がった。顔じゅう、まっ赤である。明日香がそっと、悠馬の身体を抱く。
「何、あやまってるの」
「だって、あの、その、僕、先輩の膝の上に……。ごめんなさい」
「そんなこと言わないで。朝井くんは私を助けてくれた。私、もう朝井くんから離れないから」
「えっ、そんな……。僕みたいな陰キャラに関わらないでください。みんなに笑われます」
「私だって陰キャラだもの。それに上杉くんを笑う人間がいたら、私がその人間を笑ってあげるから」
明日香は悠馬のほっぺたにキッスをした。
「私ね。朝井くんのことを、中学のときから知ってたんだよ」
エエーッ! これはまさしく衝撃すぎる事実ではないか。
「どういうことなんです?」
「やっぱり覚えていないんだね。朝井くんに助けられるのってね。これで二回目なの」
夢見る眼差しで、明日香は一年のときに悠馬に助けられたことを打ち明けた。
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