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高嶺の花への接し方
小型のロールピアノが柔らかく優しいメロディを奏でた。悠馬がメロディに合わせて小声で歌う。聴いていると何だか胸が詰まってくるような純粋な美しさの伝わってくる歌声だった。
「星を見るとき 僕は考えてしまう♪
どうして星は あんなに遠くにあるのだろうか♩
どうして星は どんなに手を伸ばしても届かないんだろうか♫
どうしてあの女性は高嶺の星なんだろう♩
だけどそれでもいい♪
夜空の星を ずっと見上げているように♩
ずっと僕は いつまでも 自分の生が尽きるまで♫
たったひとりで遠くから 高嶺の星を見つめている♪
高嶺の星が いつまでもキラキラと美しく輝くのを望みながら♩
高嶺の星が時には僕に 目を向けてくれることを信じて♫
僕はひとりで しっかり前を向いて歩いていきたい♪
高嶺の星に喜んでもらえるように♩
高嶺の星 綺集院香連さんのために♫」
悠馬の弾き語りが終わった。
この歌は元々、悠馬の父がつくったものだった。少し歌詞を書き替えて、自分の想いを伝える歌にしたのである。
悠馬は顔を上げた。明日香が両手で自分の顔を覆っていた。指の間から涙がこぼれ落ちていく。肩を大きく震わせている。
(先輩って、きっと僕のプライドを考えて、すごく感激した態度を……。本当にすみません)
悠馬は申し訳ない思いになった。ただ明日香なら、悠馬の高嶺の花が誰なのか、きっと分かってくれたはずだ。
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