プロローグ

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東雲の言葉はどんな言葉よりも信じられる気がしたけれど、同時にとてつもない恐怖心が湧いてきた。 こんなことが本当に起こり得るのだろうか。 次の瞬間、何本気にしてんのとか、目を開けたら天井が見えたとか、そんな夢オチが待っていたりする? 東雲の出方を伺う私を他所に、東雲はくるんと背を向けた。 「そ。じゃあ、そういうことで。おやすみ」 ……そういうことで。 「(どういうことで?)」 夢と現実の狭間で一人疑問符を打つ。 「わかった。おやすみ〜」 とりあえず、詳しいことは明日聞こう。まぶたを下ろすと意識は遠のいていった。薄れゆく意識の中、疑問は浮かんでは消えた。 あれ、でもそういえば、東雲って好きな子いなかったっけ? ──……ありふれたそれこそ、一種の戯言。 今日は間違いなく、妃立柑花(ひたちかんな)リスタートの日。 25歳の誕生日、彼氏の浮気現場を抑えたので別れたらうっかり同期と付き合った、なんて、一種の過ち?それとも、巡り巡った、これも結果? 何にせよ、これは私と東雲、恋愛不適合な私たちによる、利害関係における、化学反応の物語。
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