花より団子、団子よりきみ

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花より団子、団子よりきみ

あれからほんの少しだけ季節は回って、冬の終わり。 𓂃𓈒 ❅ * 午後八時の閑散としたオフィスに、キーボードを叩く音が響く。最終確認も終わり、共有フォルダに提出するとうんと背伸びをした。 「終わったあ〜!!」 伸ばした手を下ろせば、少し離れた場所で「終わった?」と、平坦な声が届いた。 無事に両想いへとなった、恋人の東雲琥珀だ。 「指示通りの修正は終わらせたから、あとは納品だけです」 「よし。飲みいくか」 「賛成〜!て、あれ?他の人もう帰っちゃったの?」 「部長と世良さんは接待。あとでまた戻るって」 「うわあ、大変だなあ……」 管理職は残業がつかないからといって、部長達も大変そうである。前回同様、安請け合いな仕事を取ってくるのは勘弁して欲しいものだけど。 「そういえば昼間、飴、ありがとう」 エレベーターに乗ると東雲は私の知らない記憶をなぞる。 「飴?なにそれ」 当たり前に尋ねると、東雲の眉間に小さな皺が寄った。彼氏の不機嫌な顔が好きだと言えば変な女だと思われる可能性が高いけれど、東雲はどんな表情だって好きだ。
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