花より団子、団子よりきみ

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スケジュールをプラスさせると、再び“金のわらじ”めがけて進む。ふと、右肩の温かさに違和感。 「……ねえ、近くない?」 もう共有する画面はなく、ただ歩いているだけなのに何故かやったらめったら近い。私が距離をとると東雲は当たり前のように「近くない」と言いながら私を路肩に寄せるように押しやる。どう考えても近い。 「東雲は気にしないかもしれないけれど、誰かに見られるかもしれないから離れようか」 「パッと見誰かわかんないでしょ」 「見る人が見たら分かるでしょ?」 「ああ、確かに分かるかも」 「でしょ?理解したなら離れて」 念を押す。けれども東雲は離れない。 分かってくれたんじゃ無かったのか。それとも今日はわがまま琥珀くんなのか。 「妃立は気にしないかもしれないけれど、こうやって仕事帰りに二人で帰っていると、よく見られてるんだよな」 東雲は私の言葉をなぞっては、その無気力な瞳に誘うような光を宿し、挑発的な視線を寄越す。 「誰に?」 おっかなびっくり訊ねると、東雲は私の腰に手を回した。慣れない大胆な行動に、心臓は跳ねる。 「知らない男が、柑花のことを見てる」 「……私の事?」 「良い女だって、見られてんだよ。もしそれに全く気づいてないなら、捕まらないように牽制していた俺の努力」 茶化しているようには思えない。「分かったなら、俺の傍から離れないで?」と、立場を逆転させる。 どうやら私の平和は、東雲の努力によって保たれていたらしい。
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