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「(莇さんと言えば、初めてキスしようとした時に電話が掛かってきたんだっけ)」
その事実を思い出すと必然的に恥ずかしくなってしまう。一人勝手に。
東雲は当たり前に莇さんの隣に座り、壁側へ私を座らせた。
「俺は莇。こっちは藤。シノとは小学校の頃から超仲良しやってます」
結果、東雲を挟まないと会話が成り立たない、と言った状況に陥り、非常にままならない。
「妃立柑花です。東雲とは同じ職場の同期です。莇さんのお話はお伺いしてます」
「うわ〜、俺、会話の一部になってんの、嬉しいわ」
「妃立、莇とは話さなくて良いからね」
「ねえ琥珀くん、失礼すぎるからね」
そう言って東雲と莇さんは砕けた雰囲気で話し始めた。仲がいいのは間違いないらしい。なので、その奥にいる、私とは一番離れた場所の藤さんへと視線を送った。
「藤さんははじめましてですね」
「ああ、うん。ハジメマシテ」
うーん……。かなり誠実そうな見た目なのに、胡散臭いのはどうしてだろう。
「つかなんでいるの」
東雲が不機嫌そうに目を細めた。
「いやいや、こないだ二人で飲んでたらさ?佐々木さんが、近頃彼女と一緒に飲みに来るって言うから、なあ?」
「ねえ?」
「そういうこと」
と、莇さんは藤さんに同意を求め、藤さんは佐々木さんに同意を求め、満面の笑みを浮かべる確信犯・佐々木さんへ向かって東雲は「口封じするんだった……」と、後悔を口にした。
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