プロローグ

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彼が多忙なことは知っていた。そんな彼を応援していた。ちゃんと、物分りのいい彼女を演じていたからだ。 それなのに彼は私との時間を作るでもなく、見知らぬ女を家に入れていたのか。 「ねえ、楽しかった?」 「いや……違くて、ほら、マッサージしてて」 「マッサージって。大人なんだから、もうちょっとまともな言い訳考えなよ〜」 「いや、ほんとに、たまたま……たまたま今日は……」 「へえ〜。そっかそっか。たまたまイッたんだ。私とする時、イクなんて言わないもんね?わたし、下手くそだから」 質問を重ねる私に「彼女いないって言ったじゃん!」と、ようやく今どういう状況なのか気付いたらしい女の顔から血の気が引く。 今更女にはもう用はない。未だに真っ裸でオロオロと慌てる彼にうんざりして、鞄の中からキーリングを探し当てた。
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