プロローグ

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「よくもまあ、毎回泣かされるのに次から次へと恋愛しようと思うよな」 ニヒルなため息を落とした東雲が嘆く。私の恋愛観に対してか、自分の置かれた状況に対してか分からない。 「毎回、最後の恋愛したいなぁって思うだけなんだけどなあ」 それだけなのに、私の願望はどうしてこう難易度が高いのだろう。 テーブルに突っ伏した。ひやりとしたステンレスは私の熱をすんなりも冷まし、ここちよかった。 「そういう所じゃん」 フラットな声が耳たぶに落っこちた。 「なにが?」 「恋愛脳だし、貞操観念緩そうに見えて、中身は案外お花畑っての、男によっては面倒ってことじゃん」 「そうなの?」 「男の総意じゃねえよ。男によっては。で、何の因果か、運悪くお前は毎回そういう男を引き当ててるんだよ」 「最悪じゃん」 「そう。最悪なんだよ」 東雲は無表情で枝豆をプチッと弾き出し、レモンサワーを煽った。 たとえ最悪でも、かなり惚れっぽく、すぐ人を好きになってしまうタイプだと自負している。 恋愛は大好きだ。統計的に恋愛に奥手な人間が増えてきているらしいけれど、私は逆。人生に花を添えてくれるのは恋愛……恋人だと思ってる。 「男見る目養ってよ。で、振られる度に毎回愚痴に付き合わすな。……な?」 しかしながら東雲が言うように、恋愛脳な癖に私は男の見る目が絶望的だ。男運がない、と言っても過言ではない。 けれど、こんな情けない愚痴を身内に言えば『運のせいにしない』と叱られそうなので言えない。
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