プロローグ

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東雲と私の間には明確なルールがある。 お互い、彼氏や彼女がいる時は二人きりで会わない・身体的接触もしない。同じ職場の同期として当たり前の規約だ。 「ねえ、私、彼氏に合鍵投げ付けたって話したじゃん」 「ゴリラかチンパンジーかな?」 「黙って?それに自分の家の鍵も纏めてあったんだあ」 「うわ、最悪じゃん」 「どうしよう、お家に帰れないよ〜」 「ハイハイ。家に来れば」 「ありがとう、東雲!持つべき同期は東雲だね!乾杯しよう!」 「お前はもう飲むな。水で我慢な」 玩具を取り上げられた子供のようにレモンサワーのグラスを奪われ不貞腐れた。 恋人がいる時は距離を置くけど、逆に、お互いフリーの場合は割となんでもあり。 一度私の家で大人数の飲み会をして以降お互いの家を第二の家代わりにしている。"終電逃したから泊まる"なんて、"終電逃したから泊まっていい?"ならまだしも、確約メールが届く場合もある。 言ってみればバカをやる時の高校生のノリ。 けれども、私たちは大人。 『あんたたち距離感がおかしいから気をつけなよ』 昔、そんなことを注意されてから、距離感、という目には見えないそれを、なるべく守るようにしている。
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