7 暗転

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「マルセル! こっちくんな!」  カリマは気丈にも幼馴染みに警告する。  いまさらながら、若者の胸がえぐれるように痛む。妹も同然の娘の姉夫婦を見殺しにして逃げ出したのだ。  自分はこんな風に気遣われる資格はない。 「お役人さーん、そいつは村一番の狩人ですよ。奴隷なんかもったいない」  マルセルは、努めて朗らかに振る舞った。  カリマの籠から、彼女が仕留めた獲物を二羽取り出し、男らに差し出した。 「へい。どうかお役人さんたちのご馳走にしてください」 「マルセル!」  幼馴染に勝手に獲物を奪われた少女は、目を剥いた。マルセルは、腕のなかで暴れる娘の口を塞いで抱え込む。 「お役人さん、こいつにはよくいって聞かせます。あ、俺は鍛冶屋です。俺たち、お役人さんのために働きますから、見逃してください」  マルセルは強引にカリマの頭を押さえつけ、共に地面にひれ伏した。 「では、お前らの心意気がまことか確かめてやろう。着いてこい」  マルセルは、カリマの口を押さえ込んだまま立ち上がった。  二人はを胸当てを着けた男たちに挟まれるように、歩かされた。  森を抜け、もと来た道を戻る。  村長の館が見えてきた。  不吉な臭いが漂ってくる。  次第にパチパチとなにかが焼ける音が大きくなってきた。 (カリマ、耐えろ!)  マルセルは、片手でカリマの顔を押さえ込み、自分の胸に押し付ける。  館の庭には、身重のシャルロット、村長リュシアン、そして使用人たちの死骸が積み上げられ、火がかけられていた。
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