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トゥール村に、エリオンたちがラサ村で魔王軍を撃退したことがすでに伝えられており、一行は歓迎を受ける。
老いた女村長が「狭いですが、お部屋を用意しましょう」と、館に案内した。
槍使いの中年ニコスが進み出た。
「すまないが、我らの師匠の部屋は別にしてくれないか。我ら七人は、家畜小屋でも構わぬ」
短剣使いのホアキンが横やりを入れた。
「待ってよ。あたしら男六人はそれでいいけど、カリマちゃんは若い女の子よ。村長さん、悪いけれど、部屋二つ用意してくれないかな? あたしら男六人はその辺で雑魚寝するから」
「もちろんですよ。男の方々も雑魚寝なんておっしゃらず、部屋を用意しますから」
村長がいそいそと動き始めたとき、エリオンが割り込んだ。
「部屋は二つで構わぬ。カリマは私の部屋においで」
ローブの美しい青年が、少女に手を指し伸ばした。
一同は「えええ!」と顔を見合わせる。真っ先にセオドアが反応した。
「師匠はいつもひとりになりたいとおっしゃるのに……まさかカリマが娘だからですか?」
いきり立つセオドアをニコスが諫めた。
「私は師匠を信じております。ですから、師匠がカリマと同じ部屋で過ちを犯す方ではないことはわかっております。しかし、セオドアの疑いはもっともなこと」
エリオンは笑った。
「ニコス。私を信じるならそれでよいであろう? 若い娘であるカリマが、お前たちと同じ部屋では心細かろうと思ったまで」
美青年は少女の肩を抱き寄せ、村長の勧める部屋に入っていった。
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