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32 はじまりの後悔
トゥール村で、エリオンたちは村人に魔王撃退の技を伝授する。新人カリマも、得意の弓術を村人に教えた。
エリオンは村人に、ネクロザールが聖王の生まれ変わりではないことを、村の広場で滔々と説く。人々は耳を傾ける。
「よいか。真の聖王アトレウスは、生贄を求めなかったし、美女を集めもしなかった。聖王には聖妃アタランテがいたからな」
老女が首を傾げた。
「んー? あたしが聞いた話はちょっと違ったかなあ。えーと……」
エリオンは、老女の前にしゃがみ込み、頬をそっと撫で微笑みかけた。
「聖王の話は千年もの過去。言い伝えが変わることもあろう。しかし、聖王アトレウスがゴンドレシアを栄えさせた偉大な王であり、その治世に一点も曇りもなかったことは、疑いようもない事実だ」
再びブルネットの巻き毛の青年は立ち上がり、両腕を翳す。
「決してネクロザールに屈してはならぬ! 民を苦しめるあの者が、聖王の生まれ変わりのはずがない!」
村人は拍手喝采で、エリオンを湛えた。
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