32 はじまりの後悔

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「ひっ、ひええええ! た、助けてえええ!!!」  仲間の旅人は、カリマの背後に隠れて縮こまる。 「セ、セオドア! あ、あんた……あ、あ」  剣士の残虐行為にカリマは身を震わせるも、残った旅人を庇いだてる。 「いいから女! どけ!」  途端、広場に喧騒の渦が巻きおこる。エリオンと他の五人の戦士が、村中から駆け付けた。  槍のニコスが高らかに呼びかけた。 「村人は外に出るな! 家に戻って戸を固く締めるように!」  我に返ったカリマは、セオドアをにらみつける。 「あんた、な、なんで、よそもんというだけで殺すのか! 魔王と同じじゃないか!」  剣士は「どけ!」と剣を突きつける。  カリマは震える旅人に囁いた。 「ごめん。あんたに弓教えたいけど、こいつ危ないから、今のうちに逃げな」  旅人の男は「カリマさん、あんたはいい人だねえ」と目を細める。 「そんなこといいから、あれ? あたしの名前、知ってるんだ」  気づいたときは遅かった。  カリマは旅人に羽交い絞めされ、首に短剣を突きつけられていた。  旅人の男は、声を荒げる。 「この女を殺されたくなければ、エリオンを引き渡せ!」
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