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男の壮絶な過去を聞かされ、カリマの目に涙があふれる。
「ごめんねセオドア。無理に辛いことを言わせて」
「私は師の命に従ったまで」
傍らで見つめていたエリオンがカリマの背中を撫でた。
「カリマよ。お前が気に病むことはない。私はただ、セオドアの力が信じるに値することを知ってほしかったのだ」
精悍な剣士は、巻き毛の美青年を睨みつける。
「師匠。私はカリマに包み隠さず教えました。ですから、なぜこの女を仲間として認めたのか、教えていただきたい」
カリマは、エリオンを庇うようにセオドアの前に立った。
「待ってよセオドア。あたしが強引にみんなに割り込んだのは悪かったけど、エリオン様に文句言うのは違うだろ?」
「お前のように我らと共に戦いたいと志願する者は、あとを絶たない。しかし、師が三年間の旅で受け入れたのは、我ら七人のみ。私には、師がお前を選んだ理由がまったく理解できない」
剣士に睨みつけられるが、カリマは頬を緩ませた。自分はエリオンに選ばれた……悪い気はしない。
「セオドア、師を疑ってはならぬ」
落ち葉を踏みつける音と共に、低い男の声が響いた。
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