33 誇り高い剣士の過去

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 エリオンが振り返る。 「ニコスか。気がつかなかった。いつからそこに?」 「申し訳もありません。師に何かあればと気がかりで、勝手について参りました」  六人の男戦士はみなエリオンを崇めているが、この中年男の忠誠心は群を抜いているようだ。  カリマの亡き父と同年代の男だ。セオドアのように怒鳴ることはない。 「セオドア。師は、凡俗である我らには見えない何かを、カリマ殿に見いだしているのだろう。それで良いではないか」  ニコスはセオドアの肩を軽く叩いた。  カリマはニコスの言い方に引っかかりを覚えたが、エリオンに笑顔を向けられ、忘れてしまった。 「さて、そろそろ私は休みたい。カリマ、私の傍においで」  戦士達の師匠はカリマの手を取り、二人の男をあとにした。  少女は荷袋からマントを取り出して身を包み、草むらに横たわった。  エリオンが寝そべるカリマに身を寄せてきた。 「少し冷えてきたな。いいか? このままで」  青年の温もりが少女の腕に伝わってきた。  またカリマは眠れない夜を過ごすこととなった。
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